富裕層マーケティングコラム

富裕層マーケティングの視点から「なぜ富裕層による富裕層向けビジネスが失敗するのか」を考える

当社には富裕層からの相談が多数寄せられる。中でもこのところ多くなってきたのが、彼らの会社が手掛けるビジネスについての相談だ。面白いことに、そのほとんどがいわゆる「富裕層向けビジネス」の相談なのだ。

この数年で日本の所得格差はさらに進み、富裕層はより富裕化している。そうした中、自分たちのビジネスも富裕層をターゲットにした方が良さそうだ、ということに気付いているのだろう。

ラグジュアリーブランドやプライベートバンク、あるいはリテールバンキングなどにおいて富裕層に特別な情報を提供するハイエンドビジネスがある。これまで、そうしたサービスを受けてきた富裕層が、今度はサービス提供者として富裕層ビジネスへの参入を検討し始めているのだ。

 

一口に富裕層と言ってもタイプはさまざま

以前、このコラムで、アジア富裕層の特徴を書いたことがある(「アジア富裕層マーケティングの肝は旅行ビジネス」http://rpartners.jp/column/1102/)。それらの特徴の中で私が最も注目したのは、「アジア富裕層の多くが、グローバル富裕層向けのビジネスを展開している」という現実だった。アジア社会は日本よりもさらに二極化が激しいので、当然と言えば当然かもしれない。

特に目立つのは、ターゲットを富裕層に絞り、ハイエンド仕様にしたラグジュアリーリゾートを経営する富裕層ファミリーの多さだ。

こうしたアジアでの「富裕層の、富裕層による、富裕層のための富裕層ビジネス」が日本においても明らかに芽生えつつある。

造船会社が小型船をつくり、子会社の旅行会社を通じて富裕層向けクルーズ旅行を企画し、旅行展示会などをきっかけにしてグローバルに販売する、などという図式はその典型だろう。もっと身近な例を挙げれば、富裕層ビジネスの“理想形”である銀座の高級クラブも、オーナーのほとんどは富裕層である。

高額旅行であれ高級クラブであれ、「こういう商品やサービスであれば自分は購入する」というツボを心得た富裕層が富裕層ビジネスに参入するわけだからうまくいくに違いない、と思いがちだ。しかし、現実にはそうはならない。

大きな理由の1つは、一口に富裕層と言ってもそのタイプは様々で、かなり細かく分類できるからだ。

富裕層ビジネスを始める本人も、細かく分類されたタイプの1つに過ぎない。だが、他の富裕層も自分と同様だと考え、定量的な判断軸を持たず、自分自身の経験に基づいて事業判断する傾向が強い。

私自身は、このようなある種の動物的なカンで事業拡大できる人は大好きなタイプだ。とはいえ、自分の経験だけに基づいたビジネスは往々にして失敗する。

 

事業をスタッフに任せてはいけない

また、よくある失敗のパターンが、事業をスタッフに任せてしまうことだ。スタッフのほとんどは富裕層ではないため、本質的に富裕層ビジネスとは何たるかが分かっていない。その結果、右往左往することになる。

そこで私は、富裕層が当社に相談に来ると、以下のような話をすることにしている。

「先日、東南アジアで旅行の商談会に1週間参加して、80を超えるリゾートと商談してきました。どこも立派なリゾートなんですが、商談ブースはとても狭いし、商談相手も1人しかいません。そうした商談に出てくる相手には2つのタイプがあるんです。1つはiPadを使ってリゾートの部屋数や部屋の設備の説明から始めるタイプ、もう1つは、私の目を見て周辺環境の素晴らしさとコンセプトから話し出すタイプです。前者はセールスマン、後者はそのリゾートのオーナーです。富裕層のオーナーが、なぜ現場の商談にたった1人で出ているのか分かりますか? 商談会に参加しているのは誰もが富裕層ビジネス関係者で、それなりの生活をしている人たちです。つまり、オーナーはそこにいるすべての参加者が顧客になる可能性を知っています。富裕層と商談するには、富裕層である自分が出て行って、直接話をしなければならないと考えているのです。なので、もしもそうした商談会に部下を参加させるつもりであれば、事業はうまくいかないでしょう。やめたほうがいいと思います」

富裕層の富裕層による富裕層のための富裕層ビジネスは、人民の人民による人民のための政治よりも難しいのだ。

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