富裕層マーケティングコラム

年収1億円超の富裕層が送る意外と地味な生活

お金持ちは身近にいる

「富裕層はどこにいるんでしょう?」

富裕層ビジネスを多角的に展開する私の会社には、よくこのような問いかけが投げかけられる。私はほとんどの場合こう答えることにしている。

「意外とあなたのとなりにいると思いますよ」

小中学生の頃を思い出してみてほしい。友人の自宅にお邪魔してみると、「すごいお家だなあ」と思ったような家はなかっただろうか。意識してみると、実はお金持ちは身近にいる。もちろん高級住宅街と呼ばれるようなところにお金持ちは集まっているが、意外と普通の街にも庶民には考えられないほどの資産を持っているお金持ちは点在している。オフィスで席を並べている同僚の中にも実家が相当な資産家で、年収は自分と同水準であっても、相対的に裕福な生活を送っている人もいる。

東京都港区に在住する榎本博之さん(仮名)は、横浜生まれの70歳男性だ。10歳年下の妻と結婚して28年。子供は20代の長女と長男の2人。長女は嫁いで広島に在住、長男は東京でサラリーマン3年目だ。約10年前に勤めていた会社を定年退職し、現在は妻と一緒にビル管理業を営んでいる。15年前から東京・南青山近辺にビルを購入し始め、現在は5棟を所有している。

それぞれのテナントはほぼ満室で年間所得は1億円をくだらない。おまけに保有しているビルの価値を合算すると購入時点から約2倍になっているそうだ。ビルを売却すれば総資産は「今は30億円をくだらないでしょうね」。

榎本さんは海外の大学を卒業後、ずっと東京都港区に住んでいる。現在の自宅は22年前に購入した。勤めていたのは広告関連のビジネスを手がける編集プロダクションだ。30年もの長きにわたってプレイングマネジャー(今でいうところの執行役員か)を務め、年収は悪いときで800万円前後、バブル時代には2500万円に到達していた時代もあった。退職金を含めた生涯収入は5億円ほどだった。

とにかく仕事一筋でお祭り騒ぎが大好き。気が付いたら還暦一歩手前になっていた。働き続けるつもりだったが、同時期に妻が立ち上げたビル管理会社の取締役になった。「なかなか時間を作ってあげられなかったから、罪滅ぼしのつもりでね」。3000万円近かった退職金は「勝手に使えば?」と妻に言われ、かつて榎本さんの取引先だった企業の株式になっていて購入後は一度も売買していない。

東洋経済オンラインが資産した上場企業の生涯収入によると、平均は約2億2000万円。一般的にも2億円はひとつの目安とされ、榎本さんは会社員としては高水準な所得を得たのは間違いない。ただ、それだけでは今のような資産家にはなれていないだろう。妻の存在が大きいのだ。

榎本さんの妻は相当なやり手だ。2人の子どもを産み育てながらも、外資系金融機関を渡り歩き5年ほど前に引退、今年還暦を迎えた。この業界の人にとってはある意味当たり前のことらしいが、年収は2000万円を切ったことがなく、ボーナスの最高額は年3億円だったそう。退職金はなかったものの25年間でなんと20億円以上の所得を荒稼ぎした。

 

一見、超富裕層には見えないが

ただ、この榎本さん家族は一見すると、サラリーマン時代に夫妻で30億円も稼ぎ、現在は年収1億円以上を得ているような超富裕層には見えない。榎本さん自身も妻もとても感じのいい人たちで、子どもたちも含めてプライベートでは一切気取らない。「社会の役に立つような小さなことを続けていきたいわね」と妻。長男は「まずは勉強、大きな会社で事業を覚えたい。機が熟せば自分の得意分野で起業を考えたい」と話す。榎本さん本人は「タクシーにはあまり乗らないようにしているんだ。健康のため歩くのがいちばん。だからゴルフも週2回は行く。いい言い訳になるかな」。

サラリーマン時代の名残りなのか、榎本さんは今でもよく新聞や雑誌に目を通し、情報収集を欠かさない。ランチは少しだけセレブ。帝国ホテルや渋谷のセルリアンホテルの和食などが好みでよく行く。1回当たり1万円程度を払う。が、夜は毎日飲み歩くというわけでもない。むしろ妻の手料理で晩酌のほうがお好みだ。

車こそ800万円のレクサスを持ち、次はマセラティを考えているが、時計はセイコー。30代の時から使っているそうで「死ぬまでこれで十分だよ」。クレジットカードもゴールドカードを持っているワケでもなく、普通のカードで「クレジットカードにクレジットされる必要ないからね」。妻にいたってはまったく高額品に興味がない。高額OK割高NG。普段の生活は普通の家庭と極端に差があるようにも見えない。世界基準で「超富裕層」の部類に入るファミリーがこの目立たなさ。ゆえに、日本における富裕層ビジネスはとても難しい。

他方、ごく普通の一般的な家庭と明らかに異なる点がある。最初に気づいたのが子どもの教育に対する考え方だ。長男は大学で米国に留学。英語はもちろん中国語もそれなりに話せるし、世界中に友人が散らばっている。1年間だけ海外留学する、という日本の大学生によくある話ではなく、入学そのものが米国の大学でしか考えていなかったという。

「日本で大学進学するともっとも学んだほうがいい時期に遊んじゃうからね」という榎本さんの一言に、おカネをかけるツボを心得ている富裕層独特の視野を感じる。このような開明的な考え方でお子さんには独立した生き方を促す。たとえばこのご家族からの悩み相談で時折思い出すのが「いやー、息子の就職が厳しいみたいでさ、こんなことやりたいって言っているんだけど、何かいいツテないかな?」という話だ。その実、求めていることは、単なる紹介であって、すべて本人に行動や判断は任せるという。子育てに関しては終始一貫して「独立心を促す」ことを重視してきたそうだ。

相続に関しての考え方もいたってシンプル。「使いきれない可能性もあるが相続税が高いとはいえ、いくばくかは残せるだろうから、子供は子供で自分で頑張っていけばいい」。要するに節税と呼ばれるものにそれほど関心がない……ようにみえる。

「ようにみえる」としたのには理由がある。その理由とはこのご家族は「おカネを現金で持たない」ことを徹底していることだ。このあたりも富裕層独特の感覚といえる。「おカネには働いてもらう」と言い、逆に言えば「預貯金」という言葉に鈍いのだ。

 

超富裕層の投資基準

資産運用に関しては、「購入するのは港区の不動産と決めている。収入が見えやすいのがいちばんの理由だ。散歩ついでに家の近くのビルを物色して安くなった時期に一気に購入して持ち続ける、それが安定的な利回りを生み出す、という投資基準。「目の届く範囲で確実な案件」のみに投資するとなるとやはり不動産ということになるらしい。

榎本さんがみずからの資産運用方針を語ってくれたことがある。

「自分が理解できないものに投資するような年齢でもないからね。昔、関所というのがあっただろう。あのイメージだ。そのオーナーになれば毎日収入がある。高額なものでも構わない、収入も多くなるはずだから。あ、割高なのはダメよ、俺のヨメさん一発で見抜くから」

これは、世界的に名を馳せる投資家であるピーター・リンチやウォーレン・バフェットが言っていることととても近い。退職金3000万円を当時の取引先の株式に換えて、一度も売買していないのも、「安定的なものを安く買い、ずっと持ち続ける」というバリュー投資そのものなのだ。目立って動き回らないし、結局目立たない。榎本さんのような超富裕層が、あなたのすぐとなりにもいるはずだ。

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